2021/07/26
進研ゼミに習う市場シェア拡大のマーケティング手法とは
このページでは、なぜ商品・サービスを子供に向けて訴求すると市場シェア拡大に繋がるのか?その理由と、マンガの効果についての研究事例を紹介します。
子供をターゲットにして市場シェア拡大を狙った分かりやすい事例として「進研ゼミ」が挙げられます。
子供の頃、DMでマンガが送られてきて、思わず読んでしまった経験はないでしょうか?通常のDMが送られてきても積極的に読むことはあまりなかったと思います。しかし、そのDMがマンガであることで子供でも読んでしまったのではないでしょうか。
また「子供の頃に送られてきたDMで記憶に残っているDMは何ですか?」と聞かれてもほとんど覚えていないと思います。しかし「進研ゼミのマンガDM」は覚えているのではないでしょうか。それだけ「進研ゼミのマンガDM」が子供でも興味と持って読むことができ、それにより記憶に残ったという効果的なマーケティングツールだったと言えます。
ではなぜ、子供に訴求したマンガが市場シェア拡大につながるのでしょうか?
その理由は…
「商品・サービスの情報が子供を媒介として親など家族に伝達される」 からです。
つまり、子供を伝道者にすることで商品・サービスを世の中に素早く浸透させることが可能になるという考えです。
「進研ゼミ」のマンガはそれを実現していたのではないでしょうか。
届いたDMはマンガなので子供でも気軽に読めます。マンガは「進研ゼミのおかげで勉強も運動も上手くいく」というストーリーで、進研ゼミで勉強した場合のベネフィットを伝えています。そのようなマンガDMが高頻度で送られてきます。何度も読んでいるうちに「進研ゼミ」という名前は子供でも覚えますし、ベネフィットが伝わり「何だか良さそう」というイメージを与えることにも繋がります。
マンガを読んだ時点では「進研ゼミで勉強したい!」と思わなくても、テストや受験などで勉強をしようと思った時に、学習方法の一つとして想起され、親に「進研ゼミで勉強したい」と伝える かもしれません。「これ見て」とマンガDMを親に渡して内容を伝えるかもしれません。
さらにマンガDMを受け取った親は、よくあるテキスト中心のDMよりも興味を持ちやすく、印象にも残りやすいので、ブランディングにもなるでしょう。マンガであることで親自身もつい読んでしまうかもしれません。
このように、子供に訴求した情報が親に伝達されたと考えられます。
それだけではありません。
子供の頃に読んだ「進研ゼミ」を親になっても覚えていることで、今度は自分の子供の学習ツールを選ぶ際に想起することにも繋がります。
まさに「進研ゼミ」こそ、大人にダイレクトに訴求するのではなく、子供に訴求して市場シェア拡大に繋がった成功事例と呼べます。
「脳卒中」という難しい内容もマンガなら伝わった
子供を媒介として情報が伝達された研究結果があります。
Matsuzono氏の研究[1]は、子供に脳卒中の症状をマンガで教えることで、子供を媒介として親などの家族の認識が変化することを報告しています。この研究では、子供が家に持ち帰ったマンガを媒介として、子供を伝道者にすることで意識の向上ができることがわかりました。
しかし、子供を媒介にすることは容易ではありません。なぜならば、子供に興味を持ってもらい、子供が情報を理解することができなければ、家族に伝達されることもないからです。
上記で挙げたMatsuzono氏の研究では、脳卒中の症状をマンガで教える ことで、子供でも理解できて、家族に情報が伝わり脳卒中に関する認識が変わったと考えられます。
つまり、子供の内容理解に役立ったのが「マンガ」であると言えます。
マンガによって内容を理解した子供が、家族に話をする。もしくはマンガを家族に渡すことで読んでもらい情報が伝わる。これはマンガのメリットでもある「難しいことを分かりやすくする」「読んでもらいやすい」ことがもたらす効果 だと考えられます。
子供を媒介にするマンガのアイデア
では具体的に、子供を媒介にする場合にはどのようなマンガを制作できるのか?まだ世の中であまり使われていないマンガの例を挙げてみます。
啓発系のマンガ
啓発系のマンガは、大人ではなく子供向けに訴求すると効果が期待できそうです。
例えば「タバコの吸い過ぎによる身体への影響」をマンガで啓発する際に、喫煙者に訴求するのではなく、子供に訴求します。マンガ小冊子を大人自身が読むよりも、子供から「タバコの吸い過ぎによる身体への影響」について伝えられる方が親の立場からすると心に刺さるのではないでしょうか。
学習関連のマンガ
進研ゼミのようなマンガや学習塾の紹介マンガなどはよく見かけますが、学習で使う文房具をマンガで紹介するのも面白いかもしれません。ボールペンや消しゴム、学習ノートなどのベネフィットをマンガで伝えます。文房具をキャラクター化するとより興味を持たせることもできそうです。
文房具は「子供が選び、親が購入する」ことが多いと思いますので、子供を媒介にして親に伝わりやすいと考えられます。
観光業界のマンガ
観光業界でも使っても面白いかもしれません。例えば子供向けの「ホテルの紹介マンガ」はどうでしょうか。ゲームコーナーやプール、遊具などの施設の紹介、美味しいご飯とデザートの紹介、花火大会やヒーローショーなどのイベントの紹介をする子供がワクワクするようなマンガを制作します。
同様に、子供が楽しめる「観光スポット」をマンガで紹介しても良いでしょう。「ここに泊まりたい!行きたい!」と子供から親に伝達されることで、旅行先の候補になることも期待できます。
そして啓発系のマンガであれば、学習教材として活用してもらったり、学校や自治体で配布してもらうと効果的でしょう。商品やサービスを紹介するマンガであれば、今では子供が当たり前のように見ているYoutubeに「マンガ動画」として広告を出稿して子供に訴求する方法も考えられます。
以上は一例ですが、他にも様々な子供向けのマンガも制作できそうです。
このように、大人に対してダイレクトに訴求せずに、マンガを使って子供に対して訴求することで、子供から大人への情報伝達が促進されることが期待できます。
参考文献
[1] K. Matsuzono et al., ʻEffects of Stroke Education of Junior High School Students on Stroke Knowledge of Their Parentsʼ, Stroke, vol. 46, no. 2. pp. 572‒574, 2015.